AgneiyaIV
第四章 虚無の聖女 
5.混迷(3)


「昨夜は何やら、騒がしかったようだが」
 朝餉の給仕をする小間使いに、宰相エルハルトは声をかける。小間使いは一瞬、表情を曇らせたが。
「左様でございますね」
 曖昧な言葉を返した。本来、侍女を含む使用人は、極力彼と言葉を交わしてはいけないと定められているのだろう。こちらに、幽閉されて以来、必要事項以外の受け答えはないのだ。ここまで徹底されているとある意味清々しささえ覚えてしまう。
 だが、今日はそのようなことは言っていられなかった。何より、シェラの姿が見えない。彼女のことだ、騒ぎがあれば何らかの形でエルハルトに接触をしてくるはずである。それがまるで音沙汰ないということは。
 まさか、と。暗い予感が胸を過ぎる。
 シェラの正体が発覚し、捕らわれたか。あるいは殺害されたか。
 いや――それはない、と宰相はかぶりを振った。シェラは優秀な密偵である。剣の腕も確かだ。素性がばれた時点で、上手く逃走を図るだろう。そうに違いない。
 思う自分は、シェラの無事を信じているのか、祈っているのか。エルハルトは苦笑する。領地に妻と共に残してきた娘、彼女の面影をシェラに重ねているのだ、自分は。かつての学友の娘、ということもあるだろうが、必要以上にシェラに情を移してしまった。そのことを、少しだけ後悔する。何かあったときは、シェラは迷わず自身の命を投げ出すだろう。そのときに。そのときに、自分は。
「……」
 己の思考に沈みすぎたからか、殆ど朝餉には手をつけずに下げさせた。小間使いは特に何を言うこともなく、無表情のままに残り物を下げていく。この娘は、仮面でもつけているのではないか、と思うくらいに表情がない。彼女だけではなく、この離宮に勤めている者は皆、一様に表情に乏しい。
 だから。
「おはようございます、閣下」
 フィオレラ、といったか。どこかしらぽやんとした、けれども妙に表情豊かなこの娘が、非常に浮いて見えるのだ。彼女は朝の散策の付き添いとして、月に何度か現れる。典型的なミアルシァの容姿を持つ、いかにもお嬢様育ちのおっとりした娘だ。言葉も若干間延びしているせいか、少々頭の中も緩いのではないか、と思いたくなるような人物だが、散策の付き添いに怜悧な人物を求める必要はない。ミアルシァから呼び寄せられた現アヤルカス王国宰相の縁者と言うが、この娘を見ているとその父たる宰相の実力も、推して知るべしである。

「昨夜、で、ございますか?」

 この娘なら、もしや。そう思って、騒ぎのことを尋ねれば、案の定フィオレラはにこにこと笑いながら答えてくれた。曰く、賊が侵入したのだと。
「見かけぬ娘が侍女と称して此方に勤めていると、そんな情報が紫芳宮から齎されたそうです。わたくし、ちょうど不審な者を見かけましたので、それで」
 なんと、シェラを通報したのは、この娘か。エルハルトは軽く眼を見張る。しかも彼女は、シェラに人質とされ、危うく命を落としかけたとも言った。
「それで……」
「ご覧の通り、無事ですわ」
 陽だまりの如き笑顔に、負の感情は欠片も含まれない。彼女は慎ましやかに神聖帝国宰相の後を歩きながらも、時折咲き乱れる花に目を奪われては歩を止め、エルハルトが振り返るたびに悪びれずに顔を綻ばせ
「閣下、綺麗でございますよ、このお花」
 お部屋に飾りましょうか、等と言いつつ、季節の花を摘んでいる。最早、監視という自身の役目をすっかり忘れて、花を愛でる楽しみに興じているフィオレラには、驚きを通して呆れている。
「して、賊は?」
「逃げました」
 あっけらかんとフィオレラは言う。逃げたか、――エルハルトは、ほっとした。シェラのことだ、そう簡単に捕らわれる筈がない。
「そうか」
 その声に、安堵の色が混じってはいなかったか。呟いた後にどきりとしてフィオレラを伺ったが、その表情からは何も見ては取れなかった。彼女は穏やかに目を細めたまま、ふと離宮を振り仰ぐ。三階の、皇太后の部屋。そこに視線を向けてから、ふうわりと口元を緩めた。
「今日は、良い日になりそうですわね」
 フィオレラの独り言。それを聞き流してエルハルトは散策を続けた。
 シェラが離宮を追われた。ならば、残る伝手は、ユリアしかいない。彼女は、次にいつ、アシャンティを訪れるのか。フィオレラの言葉とは裏腹に、彼の心には雲が重く低く垂れこめていた。


 庭を歩く宰相の姿が見える。窓辺でそれを確認した皇太后リディアは、今日もまた、変わらぬ一日が始まるのだと思った。露台から吹き込む風は、秋の香りを孕んでいる。高く冴えわたる空には、夏の名残りさえ見ることはできない。季節は変わりゆく。秋へと。秋から、やがて、冬へと。
「陛下」
 侍女が、楽師の来訪を告げた。リディアは驚く。予告はなかった。次回はいつ来られるか、それは判らないとユリア自身も言っていたが、存外早く外出の許しが出たのだろう。アイリアナは気に入りの楽師を虜囚である異母妹に下賜することで、自尊心を満たしているのかもしれない。いまや、アヤルカスで最も権威ある女性はアイリアナである。どのような肩書きを持っていようとも、リディアに権限は一切ない。

「ご無沙汰しております、陛下」

 微笑むユリア、いつもと変わりなくアルードを抱えた彼女は、優雅に一礼して、皇太后の前に膝をついた。
「『剣姫』の続きを捧げるお約束、でしたね」
 品の良い口元に、笑みが刻まれる。そこに何かしらの意味合いを察して、皇太后は眉を動かした。
「陛下、お人払いをお願いいたします」
 ユリアの願いに、控えていた侍女らが表情を変えた。無礼な、口には出さぬが皆一瞬にしてそう思ったはずである。侍女頭に当たる女性が若輩の侍女と共に淑やかに進み出て、皇太后に対し一礼してから
「口を慎みなさい、楽師殿」
 窘めようとした、そのときである。
 徐に、楽師ユリアがアルードを覆っていた布を取り外した。ごろり、と落ちる楽器、目を剥いた侍女頭の前に突きつけられたのは、抜き身の剣。氷滴る曇りなき刃に映る自身の顔に、
「ひい」
 彼女は引き攣った声を上げた。
「怪我をしたくなければ、下がってくださいませ」
 ユリアは笑みを絶やさない。怯える侍女頭、若輩者の侍女を見比べてから、壁際に控える他の侍女にも視線を投げる。彼女らも、凶刃を携える楽師を前に、一様に声を失っていた。
「出て行きなさい。さもなければ」
 刃が軽く翻る。切っ先が華麗に縁を描き、侍女頭の髪を掠めた。途端に彼女の髪飾りがはらりと落ち、綺麗に結いあげられていた黒髪が、肩の上で跳ねる。血が流れたわけではない。傷つけられた訳ではない。けれども、女たちは悲鳴を上げた。
「無用な血は、流したくないのです」
 言いながらユリアは素早くリディアのもとに駆け寄った。皇太后は微動だにしない。恐怖を覚えているわけではない、身体が動かないわけでもない。
「早く、出てお行きなさい」
 喉元に刃を突き付けられても。信じているのだ、この楽師を。

 侍女頭以下、部屋付きの侍女たちは慌てふためきながら退室した。おそらく直ぐに衛兵を呼んでくるだろう。それを踏まえてか、ユリアはすぐに剣を引き、扉の鍵をかけた。それから、数少ない調度を入り口に押し当てる。こうして、時間を稼ぐつもりなのだろう。

「それで、どうするのだ?」

 リディアの問いに、
「待ちます」
 ユリアは簡潔に答えた。待つ――敢えて、何をとは訊かない。ユリアは「『剣姫』の続きを」と言った。今回は、敵に包囲された街からの女王救出の下りを語るつもりなのだ。
「――ヴィアンカを名乗るには、トウが立ち過ぎているが」
 苦笑するリディア。ユリアは「いいえ」とかぶりを振る。
「捕らわれし姫君は、みな、ヴィアンカ女王ですわ」



 行軍は、静かに行われた。
 先を行く兵士の背中越しに、アシャンティが見える。アシャンティ、その離宮が。シェラは、そっと傍らに寄り添う青年を見上げた。彼女同様、白銀の鎧に身を包んだ細身の青年。冑は付けず、長い髪を風に靡かせる様は、幼き頃に姉たちが好んで聴いていた、吟遊詩人語る白馬の騎士を思わせる。確かに彼は、整った綺麗な顔をしていた。月明かりの下で見たときよりも、眩い陽光に映し出された今、端麗な横顔は一際目を引いた。騎乗しているのは、白馬ならぬ青鹿毛であるが。それは、彼の艶やかな黒髪とまた、よく合っている。
 バディールと名乗ったこの青年、宰相エルハルトの腹心であり、アグネイヤ四世の乳兄弟にあたると言っていたが――
「どうされました、姫」
 視線に気づき、にこりと笑うその仕草は、気障と言っても差し支えない。この笑顔でどれだけの女性を騙して来たことか、シェラは「ふ」と生温かい笑みを浮かべる。
「いや、天下のエルディン・ロウとはいえ、この数で離宮を落とそうとしているとは」
「可笑しいですか?」
「多分にな」
 短い会話の中、二人は幾度か視線を交わし、互いの心の内を探り合う。果たして、相手が信ずるに値する人物か否か。バディールの方も、初対面のシェラを胡乱に思う部分はあるだろう。ましてや、彼女はカルノリアの娘。鴉は裏切る、そう帝国側の者に思われていることは否めない。
「陛下のお言葉がなければ、こうして貴方と駒を並べることはありませんでしたしね」
 本当は、一人で攻め込むつもりであった、否、攻め込むのではなく、皇太后及び宰相を『救出』するつもりであった、と彼は言う。こうした、大々的な動きは得意ではないのだと、
「私は、密偵ですからね」
 表に立つ仕事には向いてはいない――半ば自嘲気味な言葉に、シェラも苦い思いを噛みしめる。
 自分も、密偵だ。表に立つことは望まない。カルノリアにおいて異端の容姿を持って生まれたからこそ、陰の道を歩むことになっていたというのに、いつから自分は光ある場所に立つようになったのだろう、押し出されたのだろう。
 アシャンティの離宮、それを囲む塀の上に動きが見える。此方に気付いた見張りが、他の兵士に知らせているのだ。よもや、アシャンティを攻撃されるなど思ってもいなかったであろう。潜入しているときにも思ったが、所謂、戦に対する守備は甘い。
「さて、お手並み拝見と致しますか、鴉の姫」
 バディールは、手綱を引いた。彼が指揮を執るとばかり思っていたシェラは、声を失う。
「見せてください、我が皇帝への忠誠を。古の、戦乙女の名を持つ姫君」
 自分はその目付だと彼は語った。
 シェラはごくりと息を呑み、背後を振り返る。エルディン・ロウの傭兵部隊。腕は確かであろうが、彼らの指揮を執るのだ。戦の経験がない彼女にとっては、充分な重荷である。しかし、この攻撃で失敗する訳にはいかない。
 シェラは、馬を止めた。続く傭兵たちも歩みを止める。
「我らの役目は、皇太后陛下、宰相閣下をお救い申し上げること。そうして、再びこの地に神聖帝国の旗を翻すこと、それだけだ」
 振り返り、声を張るシェラ。一同は無言のままだった。
 シェラは引き抜いた剣を翳し、天を貫くように高くそれを突き上げる。
「全ては、我が主君のため。――ルクレツィア……否、アグネイヤ四世陛下のため」
 ぴく、と。バディールの表情が動いた。シェラは構わず、言葉を続ける。

「皇帝陛下の名のもとに――我に、続け」

 力強く馬の腹を擦り上げる。馬は跳ねるように前進した。単騎、平原を駆け抜けるシェラ。その背後から、おお、と太い地響きの如き歓声が上がる。同時に胸の奥底から湧きあがる、高揚感。いま、自分が歴史を動かそうとしている、その快感に酔いしれた。


 アシャンティの離宮は、城砦ではない。あくまでも、別荘として建設されたものである。こと、守りに関しては非常に弱く、肌を晒した乙女の如く無防備であった。迫りくるシェラらを狙って矢が放たれ、警護に当たっていた衛兵たちが討って出てくるが、それだけである。彼らは忽ち総崩れとなり敗走を始めた。

「怯むな!」
「押し戻せ!」

 それでも気丈に刃を向けてくる者たちもいる。ミアルシァの配下か、シェラに向けて高々と剣を振りあげるのは、まだ若い――少年と言って差し支えのない兵士だった。若さゆえの正義感か、引くことを知らぬのだ。シェラは一太刀でかのひとの首を刎ねる。血飛沫を上げて大地に転がる頭部を踏みつけ、彼女は離宮を目指した。先に回ったエルディン・ロウの一派が、既に裏門を破壊している。そこに馬を躍らせて、シェラは声を限りに叫んだ。

「アグネイヤ四世が妃、シェルマリヤ。我と思う者は、前に出でよ」

 血刀を掲げ、青鹿毛の馬を駆る黒髪の乙女は、迷うことなく中庭へと突き進む。と、彼女の視界に見覚えのある男性が映った。神官の纏うゆったりとした長衣に身を包んだ、背の高い男性。老いてなお、眼光鋭いその人は
「宰相閣下」
 神聖帝国宰相エルハルトだった。彼は傍に従う侍女を背後に庇い、身構えていたが。目の前に現れたのがシェラだと判ると
「おお」
 低く感嘆の声を上げる。シェラは素早く下馬し、彼の前に膝をついた。臣下の礼を取る彼女に、しかし宰相はかぶりを振り、
「姫、そのような真似は」
 窘めようとする。彼にとっては、シェラは主君の妃。サリカと呼ばれる偽りの皇帝ではなく、今はルクレツィアとして皇帝の座についている真実のアグネイヤ四世、彼女の妃の一人なのだ。それを確認したからこそ、エルハルトはシェラを信じ、時を待っていた。今がその時なのだと、視線で彼に訴えれば、宰相は力強く頷いた。
 二人が短い会話を交わす間にも、バディール率いるエルディン・ロウは、離宮内へと攻め込んでいた。皇太后の救出も、時間の問題であろう。程なくこの離宮は、彼女らの手に落ちる。しかし、落ちた処で、どうするのか。
「王都より、援軍が来てはひとたまりもないだろう」
 宰相の危惧も尤もだが、いま、主力部隊はエランヴィアへと向かっている。援軍は、来ない。来ないどころか、恐らく。
「今頃、セルニダにフィラティノアとヒルデブラントの軍勢が、攻撃を仕掛けているはずです」
 主の留守を狙い、その首都を奪う。最も単純にして、最も卑劣な行為。けれども、フィラティノアはそこに正義があるという。神聖帝国の首都奪還、悪しきものの手より正統な持ち主に返すのだ、と。
 詭弁だと思う。
 詭弁に踊らされている自分は、愚かである、とも思う。
 だが、道化と判っていても動かずにはいられない。
 あのひとのために。
「……」
 ふと、宰相の目が細められる。彼も同じ思いなのだろう。
「破壊の後に、創造があるとは思わぬよ」
 しかし、とエルハルトは言葉を継いだ。
「歪みは正さなければいけない。正されなければならない。たとえ、自分が排除される側の人間であったとしても、危うい均衡などなくすべきだ」
 彼の言葉が正しいとは思わない。思わないが、今は進むしかない。シェラは駆け付けたエルディン・ロウに宰相の身柄を委ね、再び戦列に戻った。



 何が起こったのでしょう、ユリアは剣を下ろし、外を覗いた。そうして、ああ、と声を上げる。
「陛下」
 振り返った彼女の顔に喜色が広がるのを、リディアは見た。皇太后は窓辺に駆け寄り、楽師の肩越しに外を見やる。そこで繰り広げられる光景、それは、戦そのものであった。
 闇から生まれ出たような漆黒の馬を駆る乙女、彼女に率いられた一団が、離宮を攻めている。白銀の鎧に身を包んだあの娘は、
「シェラ」
 男装の騎士、まさしく『剣姫』であった。
 よもやこれほど早く彼女がやって来るとは思わなかった。リディアは、ほうと息をつき、窓辺に肩を預ける。解放のときは近い、その足音も迫ってきている。扉の向こうで騒ぎ立てていた兵士らも、静かになった。おそらく、応戦に出向いているのだ。
 自分と宰相さえ奪還できれば、ルクレツィア一世に恐れるものはない。いや、彼女には人質は必要ないだろう。いざとなれば、全てを切り捨てられる、それがマリサなのだ。けれども、サリカは。全てを背負おうとする。救おうとする。だから、指の間から大切なものが数多零れ落ちてしまうのに。それに気づいていない。
「……」
 剣を振るう現代のエリシュ=ヴァルド。彼女の姿を見つめ、リディアは強く拳を固めた。



中庭を横切り、離宮内に飛び込む。そこは、血の海だった。それでも、逃げる者は逃げたのだろう、転がる躯は思うより少ない。シェラは横合いからの攻撃を警戒しつつ、階段を上がる。最上階へ、三階へ。今までは、決して上ることのできなかった階層、そこに足を踏み入れたシェラは、知らず声を上げた。
「これは」
 そこには、嘗てないほどの屍が山となっていた。表の警備が手薄に思えたのは、ここに衛兵が集中していたからか。抜き身を手にした衛兵は、抵抗した様子もなく、皆一太刀で冥府に送られている。その手際の鮮やかさ。
「遅かったですね」
 寄り道はいけませんよ――扉の前に佇む長髪の青年が、息一つ乱さず笑顔をつくる。バディール、彼がひとりでこの人数を屠ったのか。思うと、ぞくりとした。シェラは静かに歩み、彼の隣に立つ。揃って見つめる扉、この向こうに神聖帝国皇太后がいる。たった一枚の扉を隔てた向こうに。
「陛下」
 シェラは扉越しに呼び掛けた。
「シェルマリヤにございます、皇太后陛下」
 よく通る声は、皇太后の耳にも届いたか。
 やがて、何か重いものを動かす音が聞こえ、それから。かちゃりと高い音が続いて、
「陛下?」
 扉が開いた。そこに佇むのは、皇太后ではない、けれども見覚えのある女性であった。ユリアーナ、と呼びかけると、そのひとは優雅に頭を下げる。巫女姫の近侍、アンディルエの巫女の一人である彼女は、リディアの傍に仕えていたのだ。
「ご無事で」
 ユリアーナの声は、震えていた。神聖帝国崩壊以後、その行方が判らなかった巫女たち、彼女らは無事だったのだ――思うと、シェラも言葉を失う。ただ、目を見つめ合い、頷き合い、二人は奥に足を運んだ。そこでシェラを待っていたのは

「久しいの、シェルマリヤ姫」

 椅子に泰然と腰を下ろした、神聖帝国皇太后リディアであった。


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