AgneiyaIV
第四章 虚無の聖女 
2.暗躍(4)


 自分は、何をしてしまったのだろう。
 廊下に出たルーラは、衛兵の挨拶に適当に目礼を返し、王太子妃の私室の前を離れた。控えの間から現れた侍女が慌てて供をしようとしたが、
「下がって良い」
 言葉少なにそれを拒む。侍女は、かしこまりましたと素直に頭を下げた。侍女も近習も、今は煩わしい。とにかく、一人になりたかった。離宮の裏手、小ぢんまりとした庭園にある四阿(ガゼボ)に赴き、そこから周囲の風景に目を向ける。だが、瞳に景色は映ってはいない。脳裏に幾度も現れては消えるもの、それは鮮やかな赤。白く細い指から溢れる、鮮血。
 ルーラは自身の唇に触れた。まだ、そこに感触が残っている。サリカの指の、皮膚の、感触が。
 掌にも、じかに触れたサリカの細い手首の記憶が生々しく留まっている。
(愚かな)
 自嘲を浮かべるルーラ。
 サリカの姿に、ルクレツィア一世が重なる。先日、王妃ラウヴィーヌに彼女が襲われた際、抱きしめたときの感覚が、腕に蘇った。少し、頭を冷やさなければ。自身の中に眠る、男性としての衝動を押し殺すことはできない。
 ルクレツィアに比べて、サリカはあまりにも無防備で、無自覚だ。自身が持つ美貌、均整のとれた肢体、甘やかに薫る髪、真珠の如く上品な光沢を持つ肌の意味が判っていない。それだけでも異性を誘う要因となるのに、彼女は追い打ちをかけるように脆い部分を曝け出す。虚勢を張らず、自然体で行動する。更には、『雄』の気配を感じたときに取る態度――本能的な怯え。そのような反応を見せれば、男はより一層刺激され、欲望を煽られるというのに。何故、サリカは毅然としていられないのだろう。すぐに、怯えるのだろう。それとも、あれが通常の若い女性の反応なのだろうか。ルクレツィアが変わっているのだろうか。
(ああ)
 また、ルクレツィアと比べている。彼女に勝る人物など存在しないというのに。

「おやおや、おひとりでお散歩ですか?」

 陽気な声と共に、一人の少年が現れる。赤い瞳の宰相、ティルだった。彼は意味深長な笑みを浮かべ、ルーラの隣に佇む。
「お嬢さんがいなくて寂しいんでしょ? 慰めてもらえば?」
 誰に、とは言わない。言わなくても判る。
 ルーラは瞳に力を込めて、ティルを見下ろした。彼は「おお、怖」とわざとらしく肩をすくめる。
「何しに来た?」
 突き放すような問いに、ティルは苦笑する。別に――そんな形に唇が動いた。特に用もなく自分に声をかけるような男ではない。ルクレツィアに関することか、それともあの忌々しい小娘、サリカのことか。どちらかのことでやって来たのだろう。その予想は、外れてはいなかったが。当たってもいなかった。
「あの、偽皇帝の男妾」
 徐に彼が切り出したのは、ジェリオのことだった。彼が何か――ルーラは先を促すように首を傾ける。
「彼に頼んできたよ。お仕事」
「仕事?」
「そう。殺し屋に頼む仕事は、一つでしょ」
 涼しい顔でさらりと流すティルに、ルーラは薄ら寒さを覚えた。アーシェルの黒鷹。彼もまた、動きだしたのだ。ルクレツィアの意向ではなく、彼自身の考えであう、その指示は。
「近日中、とは言わないけどね。出来うる限り早く、始末をつけてもらう。でないと」
 面倒なことになる、と彼は言う。
「陛下は無論、ご存知なのだろうな?」
 彼の答えは聞かずとも判っていたが、敢えてルーラは問うた。彼も彼女の意図を察していたか、あっさりかぶりを振る。
「お嬢さん? 言ってはいないけど、大体察しているでしょ」
「馬鹿な。陛下の許可なくして、勝手な行動を」
「するな、と言いたいわけ? 酷いなあ、これでもオレ、参謀よ? それなりに権利は委譲されていると思うんだけどなあ? 違う?」
 くすくすと少女の如き笑い声を立てるティル。彼はいったい何を考えているのだろう。
 年齢は双子やシェラと変わらないのに、彼にはどこかしら老成された凄味がある。爪を隠した鷹の、狡猾さ――恐ろしさ。屈託なき笑顔の奥に潜む醜悪な裏の顔を想像して、ルーラは若干眩暈を覚えた。この男を、ルクレツィアの傍に置いておいてよいものか。彼の存在は、女帝の未来に暗雲をもたらすものではないのか。不安が頭を擡げる。
 ティルもまた、帝王の名と赤い瞳を持つ者。覇王として昇り詰める才気と人望も充分に備えている。ただ、巫女姫の承認を得られていない。それだけが、彼を玉座から遠ざける理由だった。ただ、巫女姫さえ彼を皇帝と認めれば。彼は真実のアグネイヤ四世たるルクレツィアを差し置き、自らの頭上に帝冠を置くであろう。それは、アウリールやアーシェルの民が望むことである。今のところ、ティルがルクレツィアに膝を屈している手前、アーシェルもルクレツィアの支配下にある。が、ひとたびティルが反旗を翻せば。
 ルーラは強く眉を引き絞った。
 そんなことはさせない。もし、ティルに少しでも不審な動きがあれば、この手で――。
「おお、怖」
 ティルはわざとらしく肩を抱き、震えて見せる。
「そんな、取って食うような顔しないでよ、美貌が台無しよ?」
 何を言う。本当に『食いそう』なのは、自分であろうに。
 ルーラは唇を噛み、彼から視線を外した。視界の片隅で、ティルの口元が僅かに歪むのが見える。せつな覚えた、微かな不安。それがゆっくりと澱の如く心の奥底に沈んでいくのを感じながら、ルーラは遠ざかる宰相の足音を聞いていた。



 まだ、胸が高鳴っている。
 どうしたというのだろう、顔が熱い。
「大丈夫ですか、他にもお怪我をなさったのでは?」
 アデルが不安げにこちらを見つめる。サリカは違うとそれを否定した。確かに、弦に弾かれた指先は、今でもずきずきと重い痛みが走っている。けれども、それだけではない。それだけではない何かが、心を騒がせるのだ。サリカは傷ついた指を握りこむ。イリアがその上からそっと手を重ねてくれた。
「おまじない」
 巫女姫には、傷を癒す力があるのだと彼女は笑った。真実の巫女姫たるリィルは、そんな二人をきょとんと見上げている。
「でもでも、アグネイヤ――いえ、サリカ、素敵だわ。あんなに上手にアルードを弾けるなんて。ああ、指が治ったらまた聴かせてちょうだい。今度は、『剣姫』がいいわ」
 うっとりと眼を細めるイリア。サリカは苦笑した。
「大曲は無理だよ。それに、その曲」
 多分、『剣姫』は、エルナのおはこだ。彼女のことである、サリカが目の前であの曲を演奏しようものなら、どのような厭味を言うか。

 ――おや、あたしに喧嘩売ってるのかい? いいじゃないか、受けて立つよ皇帝陛下。

 声と口調とそのときの態度と。全てをありありと脳裏に描くことができる。サリカは幾分げんなりし、肩を落とした。
「――病人を演じていたら、本当に具合悪くなっちゃったの?」
 重ねられたイリアの手に力が籠る。サリカは「かもね」と小さく答えた。
「るきあ、るきあ」
 そんな二人の間を割って、リィルが寝台の上に身を乗り出す。彼女は真直ぐにサリカを見つめ
「るーら、かわいそう。さびしそう」
 ひとりにしたら、だめ。切実な声で訴えた。ルーラの名にサリカの心臓がまた、跳ねる。
「探しに行きましょうか、リィル様」
 気を利かせたのか、アデルがリィルに声をかける。リィルはこくりと頷き、アデルの手を取った。小柄な侍女は、真実の巫女姫の手を引いて静かに退室する。それを見送ったイリアは、自分がずっとサリカの手を握りしめていたことに気づいて、ぱっと頬を染めた。
「いやだ、あたしったら」
 慌てて離れようとするイリア、その手首を掴み、サリカは彼女を抱き寄せた。柔らかい、弾力のある肢体が胸に倒れこんでくる。イリアは驚いた様子でサリカを見上げた。瑠璃の瞳に自分の古代紫の瞳が映り込み、黄昏と暁が微妙に混ざり合う。
「ここに来てから、ゆっくり話したことがなかった」
 サリカの言葉に、イリアは赤面したままうなずく。
「なんだか、みんな離れて行く気がして――イリアも、そのうち何処かに行ってしまうような気がして」
 サリカはイリアを抱く手に力を込めた。
 寂しい。
 先程のリィルの言葉が蘇る。自分が存外さびしがり屋であることは、とうに気付いていた。自分だけを置き去りにして、時が流れて行く。それが何より心に沁みた。孤独をここまで強く感じたことは今までにない。だからこそ、手に触れたルーラの、イリアの温もりに、気持ちが乱れたのかもしれない。
 触れられることは、嫌いではない。
 穢れた自分が触れることができるのは、自分を犯したジェリオだけだと思っていた。だからこそ、片翼に触れることも躊躇いがあった。しかし。ルーラが、自分を穢れていると罵ったルーラが。触れてくれた。イリアもまた、あのことを知らないにしろ――こうして傍にいてくれる。それが嬉しかった。
 巫女姫の放つ『気』が、自身の穢れを浄化してくれるかもしれない。
 子供じみた考えに、サリカは苦笑した。
「いかないわ。何処にもいかない」
 サリカの側にいる、イリアはそう言った。
「イリア」
 嬉しい。――嬉しくは、ある。けれども、どこかしらうそ寒い感じがした。今は、シェラがいない。だから、イリアもこちらに懐いてくるのだ。シェラが戻ってきたら、きっと。
(……)
 暗い考えを頭の隅に押しやり、サリカは礼を述べる。その言葉が、どこかぎこちなく聞こえていなければ良い――思ってイリアの様子を窺うが。彼女の表情からは読みとれなかった。


 一人きりの夕食を終えた後、サリカはアデルに付き添ってもらい、湯を使った。ジェリオの愛撫の痕が残る肌を人前に晒すのは憚られたが、アデルはそれを見て見ぬふりをしてくれている。自分よりも年下であるはずの彼女に気を使わせることが恥ずかしくもあり、情けなくもあり。サリカは終始無言のまま身を清めていた。
「アデル」
 名を呼べば、侍女はなんでございますかと首を傾げる。
「今晩、――イリアを部屋に呼んでくれないか?」
 昼間のこともある。今夜は一人では過ごしたくなかった。イリア一人ではなく、リィルも来ると言うのであれば一緒に連れてきても良いが。彼女は何となく苦手だった。サリカの気持ちを察してか、
「リルカイン様は、宰相閣下のお部屋に泊って戴きましょう」
 アデルが微笑む。そうしてもらえれば有り難い。
 湯浴みを終え、寝室に戻ったサリカは、ひとり寝台の上に座り込んでいた。
 アデルはサリカの依頼通り、イリアらの部屋に向かい、他の侍女たちは全て次の間に控えさせた。そのほうが、イリアも気兼ねなく滞在できるだろう。無論、自分も。ルクレツィアを演じるのは苦痛ではないが、やはり何処か肩が凝る。片翼であれば何なく出来るようなことも、自分は一々考えなければ出来ない。命令一つとってもそうだ。自分の言葉に従って当然、といった風に彼是と指示を出す片翼とは異なり、サリカは「こんなことを頼んでは迷惑ではないか」等といった考えが先に出てしまう。それはそれで慎ましやかと言えば聞こえは良いが、

 ――それは、相手を信用していないからではなくて?

 片翼が言うように、侍女が、近習が、使用人たちが、自分の思う通りに動いてくれないのではないか、自分でやってしまった方が良いのではないか、そんな気持ちでいるからかもしれない。もっと相手を信用しろ、とは、よく片翼から言われた言葉だった。侍女には侍女の、近習には近習の仕事もある。矜持もある。それをさせずに、上に立つ者自らが行動していては、彼らの誇りを傷つけることにもなる。片翼が言わんとしていることは、そんなことだったのだ。
 今更、気づくなんて――サリカは苦い笑みを口の端に上らせた。



 今夜、部屋に来てほしい――皇帝から后への言葉なれば、それは重要な意味を持つ。通常の場合、つまり皇帝が男子であれば、それは夜の営みを求めているのだから。
 自分とアグネイヤ四世の場合は違う。単に、皇帝が寂しいだけだ。
 アデルの迎えに「諾」と応じ、小柄な侍女がそれでは――と、リィルをティルの部屋へと預けに行くのを見送って、イリアはくすりと笑いを漏らす。やはり、アグネイヤは、サリカは寂しがり屋なのだ、と。セルニダに於いても、アグネイヤ四世が離宮に移される前はずっと同じ部屋で過ごしていた。出来ればここでも一緒に過ごしたい。イリアの想いは、しかしルクレツィア一世によって阻まれた。ルクレツィアは決してサリカを手放そうとはしない。自らの傍に置き、常に目が届くようにしている。不在の今ですら、腹心のルーラをサリカの近くに侍らせている。
 それほど、サリカを信用していないのか。
 サリカが片翼であるルクレツィア一世を裏切るとでも?
 考えると、あの高慢で冷酷な女帝に対して、怒りが沸々と湧いてきた。

 と。

 表で微かな音がした。
「……?」
 巫女姫の聴覚は、微かなその音すら捉えてしまう。露台の方だ、と。彼女は足音を忍ばせてそちらに向かった。侍女を向かわせようか、とも思ったが。呼んでいるよりも自身の目で確かめた方が早い。彼女は露台に通じる窓を細く開けた。隙間から、外を窺う。星明かりに照らされた露台には、誰も居ない。
 気のせいか、と。ほっと息をつくイリアであったが。
「えっ」
 不意に強い力で扉が開け放たれ、弾みで露台に転がり出てしまう。冷たい石畳の上に膝をついた彼女の首筋に突き付けられたのは、白銀の刃。しかも、血の香りが生々しく漂う抜き身だったのだ。
 ひっ、と喉を鳴らし、イリアは身を引く。同時に、刃を視線で辿り、その持ち主を見上げた。
 淡い明かりに浮かびあがる横顔、それは
「あなた」
 見覚えのある顔だった。確か王太子の異父弟で、名を
「ジェリオ?」
 と言ったか。思わず呟かれた名に、相手の気配が変わる。彼は刃を持たぬほう、右手でイリアの顎を捕らえ強引に仰向かせた。無論イリアも抵抗はしたが、男の力にはかなわない。
「嫁か」
 苦笑交じりの声が聞こえた。嫁、その言葉に引っ掛かりを覚えたが、間違いではない。サリカの、アグネイヤ四世の配偶者だという意味で、彼もその言葉を口にしたのだろう。イリアは上目遣いに彼を見上げ、「だから何だ」と言わんばかりに唇を尖らせる。
 この男も、虫が好かなかった。何かに付けて、サリカにちょっかいを出している。サリカが困ったような顔をしても、お構いなしである。まるでサリカを自身の所有物のように扱うその態度が、イリアの神経を逆撫でした。
「剣を引きなさい、無礼者」
 巫女姫の威厳を保ちつつ、イリアは彼に命じる。ジェリオは一瞬驚いたようだったが、イリアを捕らえる手を離し、身体を起こす。それから、剣を収めようとして――
「……っ」
 くら、とよろめき露台の柵に凭れかかる。取り落とされた剣が、耳障りな音を立てて小さく跳ねた。
「ジェリオ?」
 手を伸ばそうとして、イリアはその場で硬直する。足元に転がる剣、そこに付着した血。彼は、誰かを殺めた――もしくは、傷つけてきたのだ。思うと胃の辺りが冷えてきた。一体誰を、と考える間に、ジェリオは剣を拾おうと身を屈めるが
「う」
 呻き声をあげて、ずるずるとくず折れる。彼も傷を負っているのだ。それも、かなりの深手であろう。
「だ……大丈夫? いま、ひとを……」
 呼びに行こうとした彼女の腕を、ジェリオが掴む。反射的に振り返ると、彼は小さくかぶりを振っていた。
「誰にも言うな」
 苦しい気の下、囁くように彼は言う。けれども、この状態で放っておくことはできない。
「とりあえず、手当てをしなきゃ」
 中に入って、歩ける? 続けて言葉を浴びせるイリアに、ジェリオは疲れた笑みを向ける。彼はなにか言いたそうに唇を動かしかけたが、黙ってイリアに従い中へと足を踏み入れた。そこは、イリアとリィル用に設けられた寝室であった。婦人の寝室に男性を入れる訳にはいかない、そう思ったが、この際仕方がない。イリアはジェリオに長椅子を勧め、彼がそこに腰を下ろすのを見計らって燭台を手に傍らに立つ。何処に傷を負っているのか、灯りを近づけてみれば
「打撲だ」
 利き腕を庇った右手、その腕が腫れている。先程はこの腫れあがった手でイリアの顎を持ちあげたのだ。よく、それほどの力があったと感心するものの。
「冷やした方がいいのよね? 熱は?」
 打撲の際も、発熱する。イリアは指先で彼の額に触れた。ジェリオは驚いたように腰を浮かせるが、大人しくイリアに従う。
「折れてはいないと思うけど、念のためにお医者に診てもらった方がいいわね」
「駄目だ」
 急に声を荒げたジェリオに、今度はイリアが驚く番だった。大きく瑠璃の瞳を見開いた少女を前に、ジェリオも反省したのだろう、「悪い」と謝ってから
「心配、かけたくねぇんだよ」
 ぶっきらぼうに理由を述べる。
 それは、母や兄に対してか。それとも、サリカにか。
(ふうん?)
 サリカのことも少しは考えているのだ、この青年は。思うと、今まで意地の悪い好色漢にしか見えていなかった彼を僅かだが見直した。実はいい奴なのかもしれない――イリアは若干嬉しくなり、彼に笑顔を向ける。
「じゃあ、ここで休んでいて。いま、湿布を持ってきます」
 イリアは寝室を出て、居間を通り越し、次の間へと顔を出した。そこに詰めていた侍女に綺麗な布と水、出来れば氷と打ち身に効く膏薬が欲しいと依頼する。
「巫女姫、お怪我をされたのですか?」
 驚く侍女に「ちょっとね」イリアは曖昧に答えた。
「だから、今夜は陛下のもとには上がれません――ごめんなさい、と伝えておいて戴けると嬉しいわ」
 続けて零れた言葉には、自分でも驚いた。
 ジェリオに誰にも言うなと言われたからなのか。それを律儀に守ろうとしている自分も、存外義理堅いのだと半ば呆れたが。
(ごめんね、サリカ)
 夫に対してついた小さな嘘。それが持つ意味について、彼女は深く考えてはいなかったのだ。
 このときは。


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