AgneiyaIV | ||||
第三章 深淵の鴉 | ||||
2.探索(3) |
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幻覚かと思った。恐怖に狂った心が見せた、幻だと。 しかし、それは幻ではなかった。ジェリオは組んでいた腕を解き大股にこちらに近寄ると、アグネイヤの下肢に顔を埋めるクラウスの肩を掴んで引き起こし。 「……」 ものも言わずに彼の頬に拳を叩きこんだ。 何が起こったのか、判断しかねたのだろう。驚きに目を見開いたクラウスは、反撃が遅れる。それが、命取りだった。 いつ、抜刀したのかすらわからない。陽光が不自然な角度でアグネイヤの両眼を射た、そう思ったときには既に。 「あ……あ……」 クラウスの首は、胴を離れていた。吹きあがる鮮血、その穢れから彼女を守るように。ジェリオは無造作にクラウスの身体を蹴り飛ばす。地面に転がった遺骸は、激しく痙攣しながら血をまき散らし、――やがて、動かなくなった。 「――無事……とは言えねぇな」 無残な姿のアグネイヤを見下ろし、ジェリオは呟いた。褐色の瞳に宿る感情は、ない。アグネイヤは押し開かれた下肢を閉じ、胸を隠すようにしてゆっくりと起き上がる。全てを奪われたわけではない、けれども、体の震えが止まらなかった。彼女はその場に座り込んだまま、己の両肩を抱きしめ、ガチガチと歯を鳴らしていた。 怖い。 ジェリオに求められたときの比ではなかった。純粋に、恐怖しか感じられなかった。再びこみ上げる涙を抑えることができず、彼女は嗚咽を漏らす。 「……」 近づく気配を感じ、アグネイヤは涙に汚れた顔を上げた。こちらを見つめる褐色の瞳と視線がぶつかる。けれども、彼の顔をまともに見ることができず、顔をそむけようとした、そのとき。 強く、抱きしめられた。 「大丈夫だ」 全身に感じる温もり。アグネイヤは反射的に彼に縋りついた。もう、怖いことは何もないのだと。安堵が胸の奥からじわじわと湧き上がってくる。 アグネイヤは彼の胸に顔をうずめ、思いきり泣いた。声をあげて。 離宮に戻った二人を迎えたのは、他ならぬエーディトだった。彼はジェリオに抱えられたアグネイヤを見ると 「おっと」 と口笛を吹き。したり顔で頷く。 「おやまあ、つい、ムラムラしちゃったわけですね。若いなあ。いや、若い若い」 茶化す彼の肩をとらえ、ジェリオは鋭くその青灰色の瞳を睨み付ける。 「てめぇにゃ、後で話がある」 逃げるなよ、と、付け加え。彼はアグネイヤを抱えたまま彼女の私室へと走った。当然、残された馬二頭を厩舎に運ぶのはエーディトの仕事になるのだが。彼は押しつけられた手綱を抱えたまま、きょとんとした眼で二人を見送っていた。 「今、湯を沸かしてくる」 アグネイヤを寝台に下ろしたジェリオは、手早く彼女の体に敷布を巻きつけ、部屋を出ていった。温もりを失ったアグネイヤは、強く自身を抱えたまま、ジェリオの背を目で追う。 あのあと。 漸く落ち着きを取り戻したアグネイヤを、彼は泉のほとりまで運んだ。そこで服の裏地を裂き、水に浸し。 ――染みるぞ。 傷口を、汚れた肌を、清めてくれた。最後に彼は少し躊躇った様子ではあったが、「悪い」と一言告げてから、徐に彼女の脚を開かせる。びく、と、震えるアグネイヤの身体を抱き寄せ、秘められた部分を覗きこんだジェリオは、僅かに眉を上げた。クラウスは、そこに唇を、舌を這わせただけではない。歯を立てて、彼女を傷つけていたのだ。 (……) 噛まれた場所は、そこだけではなかった。上半身にも――胸を中心として、醜い歯型が残されている。ジェリオに噛まれたときとは違う。おぞましい、烙印。 肩を震わせていた彼女の傍に戻ったジェリオは、丁寧に敷布を外し、湯に浸した布で再び彼女を清め始めた。甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる彼に、 「ありがとう」 アグネイヤは掠れた声で礼を述べる。 「馬鹿」 彼は照れたように顔をそむけ、 「舐めてやろうか? 大事なところは」 わざと冗談めかして尋ねる。ここでアグネイヤが頷いたとしても、彼は気付かないのではないか――本気にしないのではないか。思いながら、彼の横顔を見つめていた。 「今夜。ここにいてほしい」 そんな言葉が、自然と漏れる。そのことが、ジェリオにどれだけの苦痛を強いることになるか、解っていても。 今夜だけは、彼に傍にいてほしかった。 「ああ」 断られる、思っていたアグネイヤの予想に反して、ジェリオはあっさりと頷く。彼は自身の苦悶よりも、アグネイヤの心を優先してくれたのだ。 嬉しい――。 じわり、と。心の奥から、そんな感情が湧き上がる。同時に温かい別の何かが、やわらかく全身を駆け巡る不思議な感覚をアグネイヤは覚えた。 「……」 窓から差し込む夕日に浮かび上がる、ジェリオの横顔。彼の睫毛は、これほど長かったろうか。褐色の瞳は、このように真摯な光を宿すことができたのか。常に皮肉げに歪められる唇、今は固く引き結ばれているそれは、柔らかく、温かく――彼の感触を思い出し、アグネイヤは自身の唇に触れた。 この時間が、長く続けばいい。そう思った。願った。心から。 「なんだよ?」 視線に気づいたのか、ジェリオがこちらを振り仰ぐ。アグネイヤは朱の散った顔を隠そうと、そっぽを向いたが。思い直し、再び彼に視線を向けた。琥珀の夕陽の中、古代紫の瞳と褐色の瞳、相容れぬ色が交錯する。 以前にも、こんな状況はあった。あれは、オルネラでの出来事か。クラウディアの暗殺を依頼したアグネイヤに、ジェリオが報酬を求めた。彼女はジェリオに肌を許す覚悟をして、 (ああ) 最後の最後で拒絶したのだ。クラウディアの――真実のアグネイヤの名を呼んで。 いま、ここで。彼に求められたら。自分は拒むだろうか。 けれども、一度一線を踏み越えてしまったら、もう、元には戻れないのだ。温かい抱擁も、肉欲を伴うそれにかわる。温もりを確かめ合う口付けも、前戯のひとつと化してしまう。それが、悲しかった。寂しかった。そうならぬためには、やはり、ジェリオとは距離を置いた方がいいのかもしれない。 「やっぱり」 今夜も、部屋は別で。そう言おうとした。が、言えなかった。それ以上の言葉を発することは、不可能だった。徐に立ち上がったジェリオが、優しく抱きしめてきたから。 「そんな目で見んなよ。ムラっと来ちまうだろうが」 耳元で囁かれる。その声が、アグネイヤを甘く痺れさせた。彼女はジェリオを抱き返そうと、その背に腕をまわしたのだが。 「おぼこの割には、誘う手管は高級娼婦並みだな」 続く言葉に 「馬鹿っ」 思わず彼の胸を押し返してしまう。ジェリオは笑いながら 「冗談だ、冗談」 きつく彼女を抱きしめ、髪に、額に、頬に。口づけを落とす。クラウスのそれとは異なる、熱く想いのこもった口づけを。それだけでアグネイヤの心臓は跳ね、彼の胸を押す手の力が弱くなる。その隙を突かれ、寝台に押し倒された。息がかかるほど間近に迫るジェリオの顔――こちらを見つめる褐色の瞳に宿るのは、情念でも殺意でもなく。アグネイヤがかつて見たことのない光だった。 「皇女さん?」 何を問いかけているのか、直感的に分かった。アグネイヤは答えず、唇を噛み締める。彼とは距離を置くべきだと。このままの関係を保つべきだと、頭の中で声がする。ここで求めに応じてしまえば、今後も彼は当然の如く、毎夜のようにアグネイヤを抱くだろう。 そんな彼女の葛藤を見抜いたのか、ジェリオが小さく笑った。彼は、つと手を伸ばし、指先で彼女の髪に触れる。深夜、悪夢から目覚めた彼がとる行動――アグネイヤは僅かに身を固くした。 「怪我、してるだろ? 最後まではやらねぇよ」 ただ、と。ほとんど聞き取れぬくらいの声で付け加える。 「それに近いところまでは、やらせてもらうけどな」 ゆっくりと唇を重ねられる。アグネイヤは目を閉じた。逃げようと思えば、まだ、逃げられる。ジェリオの理性があるうちに、彼の中の獣が目覚めないうちに。情に訴えれば、ジェリオは引いてくれるだろう。 彼は、優しいから。 (だめだ) 彼の優しさに付け込んでいる自分は、卑怯だ。彼が最後には引いてくれるのをいいことに、利用するだけ利用して。だから、クラウスに襲われたことは罰なのだ。勝手な自分に、天が与えた、罰。 「あ……ん、っ」 背骨の脇を指でなぞられ、アグネイヤは甘い声を上げた。クラウスやカイルに触れられたときは、恐怖と嫌悪しか覚えなかったというのに。なぜ、ジェリオの愛撫には反応してしまうのだろう。拒むことなく受け入れてしまうのだろう。敷布を掴み、声を殺しても、高まる息を抑えることはできない。 きっと、今の自分は、醜い。醜い顔をしている。それを、ジェリオに見られるのも、罰のひとつなのだ。 「あいつには……」 耳朶に、熱い囁きが投げられる。 「あいつには、聞かせたのか、この声?」 アグネイヤは強く頭を振った。聞かせていない、うわ言のように繰り返す。 「本当か?」 弱い背中を責められ、アグネイヤは引き攣るような媚声を上げた。身体の芯から熱いものがこみ上げ、それが全身を溶かしていく。息使いに混ざる嬌声は、ひどく淫靡で。アグネイヤは思わず自身の手の甲を噛んだ。こうすれは、声は漏れない。醜い声が、淫らな声が彼の耳に届くことはない。それに、痛みが快楽を忘れさせてくれる。 そんなアグネイヤの心の内を知ってか知らずか、ジェリオは優しく彼女の手をどけて、再び唇を奪う。 「ジェリオ」 長い口付けの後、洩れた呟きは、愛しさからなのか。切なさからなのか。アグネイヤは両手を伸ばし、彼の頭を抱きしめた。彼は逆らわず、彼女に引き寄せられるままに、その首筋に顔を埋める。 「ジェリオに……ジェリオだけに……」 アグネイヤの求めに応じて、クラウスの口唇愛撫を受けた同じ場所を、ジェリオの唇が辿った。おぞましい感触を払うように。彼女の肌を清めるように。 「抱いてほしい」 淫らな喘ぎに、彼の肩が揺れる。 ふたりの秘めごとを隠すかのごとく、ゆるゆると夜の気配が辺りを包んでいった。 ◆ 少女の切なげな息遣いが、まだ、耳の奥に残っている。 (ちょっと、やりすぎたか?) 腕の中で眠る彼女の横顔を見つめ、ジェリオは苦笑した。彼の愛撫によって幾度も絶頂に達した少女は、精根ともに付き果てたのか。快楽の果てに意識を手放して以来、起きる気配はない。後始末をするために彼が寝台を離れた折も、ずっと眠ったままだった。 「……」 白磁の肌に残る、自身がつけた痕を指先で辿る。ここも、そこも。あの得体の知れぬ男が触れたところは、すべて清めた。彼女の体には、自分のつけた痕しか残ってはいない。他の男の痕跡など、残すものか。 (俺だけの……) 我ながら、嫉妬深いと思う。その事実に気づいたとき、自嘲したものだ。たったひとりの異性に、ここまで執着するなど。ありえない。ありえなかった、今までは。 アグネイヤが見知らぬ男に組み敷かれているのを見たとき、頭に血が上った。許せない――激情のままに、男の首をはねた。あの男は、どこまで彼女を知ったのだろう。所有してしまったのだろう。アグネイヤの安否を確認する前に、そのことだけが気になった。だから。強引に彼女の下肢を確認してしまったのだ。 (まだ、だ) まだ、そこは汚されてはいなかった。それを知ったとき、どれほど安堵したことか。 誰にも渡さない、――強い独占欲が心を支配する。この肌は、この身体は、自分だけのものだ。他の誰にも触れさせない。初めからすべて、自分のものにする。他人に先に奪われるくらいならば、いくら拒絶されても、懇願されても。自分が先に奪ってしまえ、と。歪んだ劣情を抱えたまま、離宮へと戻った。 だが。 結局、最後まで行為を続けることは出来なかった。彼女の秘められた場所、そこは傷つけられていたから。無理に行為を成し遂げれば、彼女は快楽よりも苦痛を覚えるだろう。あまつさえ、彼女は生娘。男を知らぬ身である。 (しょうがねえ) 彼は、唇と舌で、彼女の秘部を奪った。愛撫だけで、彼女を絶頂に導いた。彼の手で昇りつめた彼女は、誰よりも妖艶で、美しくて。ジェリオの欲望を更に煽った。 (あんたが、悪いんだよ) あんな表情をするから。あんな 再び疼き始める自身を静めるために、ジェリオはそっと彼女から離れる。音もなく床に降り立ったのち、ふと、寝台を振り返り。 「……」 眠り姫の唇に己のそれを重ねた。それだけで愛しさがこみあげてくる。このままもう一度、彼女と睦み合いたい衝動に駆られるが。悲しいかな、彼にはやるべきことがあったのだ。 「そろそろ帰ってくるころだと思いましたよ」 自室の扉を開けると、そこには侍女がひとり。ぽつんと椅子に腰かけていた。無論、正確には侍女ではない。女装の少年である。ジェリオは大袈裟に息をついた。揺れる燭台の明かりの向こう、青灰色の瞳が意味深長な光を宿してこちらを窺っている。 「だからって、ここに来るかよ」 「おや、『あとで俺の部屋に来い』と仰ったのは、どなたでしたっけ?」 「――言ってねぇだろ、そんなこと」 拳を固めるジェリオ。女装の少年――エーディトは、両肩を抱きしめ「あぁんっ」と色っぽい声を上げる。 「照れなくてもいいんですよ、剣士さん」 「誰が照れてるって?」 思わず抜刀しそうになる。いや、実際、一度くらいは斬っても良いかもしれない。問題は、人間とは思えぬこの少年を普通の剣で害することができるかどうかだが。 「けど、ここにいたなら話は早い」 探す手間が省けた。 ジェリオは窓辺に歩み寄り、外の様子を窺う。人の気配がないことを確認してから、彼はエーディトに向き直る。 「隠し事はすんなよ、ガキ。――てめぇ、なんで皇女さんが襲われることを知っていた?」 単刀直入に尋ねれば、エーディトはにっこり笑って自身の頭を人差指でつつく。 「勘ですよ、女の勘」 「……」 今度こそ本気で、斬ろうかと思った。ジェリオは目を吊り上げ、剣に手をかける。 「隠し事はするなと言っただろうが」 押し殺した声で凄めば、エーディトも彼の心情を理解したのだろう。茶化すような態度を改め、 「そうですねえ」 ちらりと入口を見やってから。 「まあ、独自の情報網、って奴ですかね」 「情報網?」 「ああ、エルディン・ロウってご存知ですよね? 剣士さん?」 「エルディン、ロウ?」 ジェリオは眉をひそめる。心の端が、ちりちりと焦げる感覚。知らない、とは言えない。頭の片隅で、何かが密かに蠢き始める。小さな動揺を押し隠し、 「それが?」 何食わぬ顔で尋ねれば、エーディトは小さく笑った。 「そこからの情報――彼らは大陸の闇、どこにでも存在しているんですよ。感度の良い、目と耳と鼻を持っている。だから、知らないことはない」 エーディトの瞳の奥に、得体のしれぬ光が宿る。これが、あのおちゃらけた少年と同一人物なのだろうか。ジェリオは知らず息を呑んだ。背筋を悪寒が這いあがる。危険――この少年は危険だと、本能が告げる。 (こいつ) やはり、彼はとんだ食わせ者だ。 「そこからちょちょっと仕入れた情報でね、紫芳宮の地下牢に押し込められていた男が脱走して、国に帰ろうとしていることを小耳に挟んだんです。そやつはね、陛下に変な執着持っていますからね。遭遇することがあったら、絶対襲うだろうなあって。そう思ったんですよ」 笑顔を崩さす答えるエーディト。 「彼は、カルノリアの士官でね。密偵のような仕事をしていたそうです。ついでに、ルカンド伯の暗殺をしたとかで。それを運悪く、陛下に見られちゃったんですよねえ」 淀みなく紡がれる言葉に、ジェリオは背筋がうすら寒くなるのを感じた。この少年、一体何者なのだ。なぜ、このようなことを知っている。エルディン・ロウとは、なんなのだ。 「おまえ、何者だ?」 いつか尋ねたことと同じことを、もう一度口にする。エーディトは唇を歪め、椅子の上に胡坐をかいた。そうですねえ、と、勿体ぶった口調で天井を仰ぎ。 「荒野に咲く可憐な一輪の白百合、とでも言いましょうか。ええ、エルディン・ロウの一員であることは確かですよ。あなたと同じく、ね」 さらりと言ってのけた。 「俺と?」 思わぬ言葉に、ジェリオは目を見開く。エルディン・ロウ――大陸の闇。それがどのような組織であるのか、どのような意味を持っているのか。わからない。 (くそ) 焦りだけが先行する。ジェリオは顔を歪め、必死に記憶を辿ろうとした。だが、まるで思い出せない。切り取られた過去は、断片すら戻ってこようとはしなかった。 「悩む顔も、色っぽいですね、剣士さん」 ふふ、と、エーディトが笑う。 「大陸広しといえども、神聖皇帝の上の口に一物をぶちこめる人はあなたしかいないでしょうねえ。どうでした? 皇帝陛下の舌遣いは? ぎこちない分、燃えたでしょう。開発のし甲斐がありますからねぇ。今なら、どんな色にも染められる」 「おまえ」 見ていたのか、情事を。アグネイヤのあの表情を、汗ばむ肢体を、快楽に悶える姿を。見ていたのは、ジェリオだけではないというのか。 「美男美女の しれっと言ってのけるエーディトに、悪びれた様子はない。もしかすると、今までも、彼は皇帝の私室を窺っていたのかもしれぬ。皇帝だけではなく、ジェリオのことも。だからこそ、彼は知っているのだ。ジェリオもエルディン・ロウなる組織に属する一人だということを。そして。おそらくエルディン・ロウとしてのジェリオは、アグネイヤを殺害するよう依頼されていた。記憶を失っているとはいえ、その依頼を遂行しないジェリオは、組織に背いたことになる。と、いうことは。 「俺を、始末するつもりか?」 そのために派遣された人物――その疑いは強くなる。 「いやですよぉ、そんな下っ端みたいな役目、するわけないじゃないですか。わたしのお仕事は、別にあります。ああ、細工師も大事なお仕事ですけどね」 「お前の仕事?」 誰かの暗殺か。もしやその標的は、アグネイヤ――。 「だから、そんな暗殺なんて下っ端仕事、するわけないでしょう、このわたしが。わたしのお仕事はね」 エーディトは微笑み、軽く片目を閉じた。 「復讐、ですよ」 |
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